過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群とは

緊張や不安を感じると途端に腹痛を伴ってトイレに行きたくなり、排便すると腹痛は軽快するようなことが頻繁におこるようであれば、過敏性腸症候群の疑いがあります。腹痛に下痢や便秘の便通異常を伴うもので、心理的要因でおこる単なる不調だと考えがちですが、きちんと治療ができる病気です。
下痢や便秘などは、それだけでは命にかかわるというほどのことはありませんが、こうした症状によってQOL(生活の質)は大幅に低下しています。有病率は、14.2%とも言われており、意外と多くの方が悩まされています。市販の下痢止めなどを服用するとかえって悪化させてしまうこともあります。ここ3か月ぐらいで下記のような症状のある方は、一度消化器内科の診察を受けることをお勧めします。

IBSの診断基準(ローマ基準)

最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、かつ下記の2項目以上に該当する場合は、過敏性腸症候群の可能性があります。

  1. 排便によって症状がやわらぐ
  2. 症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
  3. 症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)

症状

便の状態によって下痢型や便秘型、そして下痢と便秘の症状が繰り返し起こる混合型があります。お腹の痛み、不快感は排便によって治まるのが特徴です。また、睡眠中にはこうした症状が見られないことも大きな特徴です。
その他、お腹が張る、お腹がぐるぐると鳴る、不意におならが出てしまうなどの症状が出ることがあります。

原因

過敏性腸症候群の患者さんでは脳と腸の間を行き来する信号の強度が通常よりも強くなっていることがわかっています。例えばストレスは、脳から自律神経への信号を強めます。その結果、消化管運動(腸が便を肛門方向に運ぶ蠕動運動)に変化が現れたり、腸の知覚機能に異常が生じたりするのではないかと考えられています。蠕動運動が活発になりすぎると下痢、鈍くなると便秘になります。過敏性腸症候群の症状は、緊張や不安、過労や睡眠不足、食事時間や生活の不規則などでもおこります。
ストレス以外にも、感染性腸炎などの細菌感染や、腸内細菌の変化、腸内に入った食べ物などが腸の運動と知覚を敏感にすると考えられており、その結果生じる便通異常によって腸は刺激に対してさらに敏感になって知覚過敏が強くなるという悪循環に陥ります。

治療

過敏性腸症候群は日常生活や仕事、学業にとって大きな障害となります。市販薬に頼るのではなく、できるだけ早く主治医や消化器専門クリニックに相談しましょう。過敏性腸症候群と診断するには内視鏡検査によって腸に他の病気・病変がないかを確認する必要があります。当クリニックでは苦痛の少ない内視鏡検査を行っていますので、安心して受診してください。

薬物療法

腸内を整える薬、腸管の動きをコントロールする薬、便の硬さを調節する薬、腸の過敏性を抑制する薬などを、お一人お一人の病気の状態に合わせて処方します。症状が出る予兆を感じたときに服用して症状を和らげる薬もあります。また、ストレスや不安感が強いときには、抗うつ薬などを使うこともあります。

生活習慣の改善

規則正しい生活やストレスの軽減、バランスを考えた食事などは、腸の活動を整え、過敏性腸症候群の症状を改善することに役立ちます。
ストレスの軽減では、多忙な中でもリラックスできる時間を必ずつくることです。特に入浴などは有効で、睡眠もおろそかにせず早寝早起きを心がけましょう。起きたら朝日を浴びて体内時計をリセットし、新たな一日の活動が始まる準備をしましょう。
食事は、3食を規則正しくきちんと摂ることが重要です。特に朝食はしっかりと摂るようにしましょう。食事内容では食物繊維を多く含むものを積極的に摂るようにしましょう。ゴボウ、バナナ、海藻類、キノコ類、こんにゃく、納豆などがあげられます。便秘型だけでなく下痢型にも混合型にも食物繊維は有効です。さらに乳酸菌を含む発酵食品なども腸を整えるのに役立ちます。アルコールの過度な摂取は腸を傷めます。香辛料などの刺激物、脂分の過剰摂取などは症状を悪化させますので控えてください。
下痢が起こる場合は、脱水症状をおこさないため、しっかりと水分を補給することも大切です。冷たいものを飲みすぎるとお腹を冷やし症状が悪化することがありますので、なるべく温かい飲み物を摂るようにしましょう。

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